ネムノキの花

ネムノキの花

 ネムノキの花が咲き始めた。近寄って葉っぱを手で摘まんでみる。ネムノキの葉はオジギソウのようには葉を閉じなかった。夜になると葉っぱを閉じて眠る。

 夏の海は宝石のたそがれのように
 くすぶつてネムの花を見ている
 たそがれの人間はささやくだけだ
 しかし人間は完全になくなることはない
 ただ形をかえるだけだ
 現在をなくすことは
 人間の言葉をなくすことだ
 どこかで人間がまたつくられている
 ーーおつかさんはとんだことだつたね
 ーーながくわずらつていたんですよ
 かくされたものは美しい
 

 西脇順三郎の『失われた時』の一節。