「悪い奴」への関心

夜景

 夕方から雪が降り始める。風が強い。夜半には外が雪で一面の白い世界になっていた。気温が午後より一段と下がった。寒波だ。北極を中心にする寒気団が南下して来ているのだ。
 池内紀の『自由人の暮らし方』(みすず書房)に所収の「野尻抱影」で、「悪い奴」のことを書き残しているとして、野尻抱影のつぎの二冊を記している。
 『英文学裏町話』1955年(研究社)
 『ろんどん怪盗伝』1956年(鱒書房

 どうして善人よりも悪人の話のほうが面白いのか?
 段ちがいに想像力が働くからだ。善人となると決まりきったイメージしか思い浮かばないのに、悪人となると、にわかに頭がいきいきとしてこないだろうか。ある言語学者が調べたところーー学者というのは、へんなことを調べるものだがーー地球上のどの国のことばであれ、善人を言うための語彙は貧弱なのに、悪人を言うためには無尽蔵にそろっているらしい。  11頁