午後三時前に、にわか雨になる。それまで空を飛びまわっていたツバメの群れが巣に戻ってゆく。
じきに雨あがり晴れる。夕方、公園に寄り道すると、バラ園が咲き誇る花で明るくなっている。ピース、ドフトボルケ、アンネフランクという名前のバラが目に鮮やかだ。クスノキの若葉に小さな花が満開である。
4日、ブックオフの新しい店で『愛蔵版 世界文学全集14 アッシャー館の崩壊 タイピー』1981年第3刷(集英社)。
エドガー・アラン・ポー、ハーマン・メルヴィルの作品を所収。富士川義之、丸谷才一、土岐恒二訳。富士川義之、土岐恒二の解説で年譜あり。メルヴィルの解説を読むと知らないことが山ほどある。
5日、ブックオフで2冊。どちらも小林さんだ。
小林信彦『定年なし、打つ手なし』2004年(朝日新聞社)
小林カツ代『わが道をゆくワンタン』1994年(PHP研究所)
装幀・川上成夫、こやまたかこ。装画・安西水丸。本文イラスト・ケンタロウ。
そのあと老舗古書店の支店に寄り店頭棚から2冊。閉店間際だった。
梅棹忠夫『情報の文明学』1988年(中央公論社)
安彦良和『虹色のトロツキー』1992年(潮出版社)初版本、絶版。
解説・山口昌男。装幀・鈴木一誌。表紙写真・昭和3年、建築まもない新京・大同広場と政府庁舎の雪景色。
口絵写真・建国大学同窓会:提供。
『虹色のトロツキー』の山口昌男の解説を読む。『夜行』を読んでいる人にはお馴染みの湊谷夢吉に初対面が可能になるはずだった山口昌男さんの悔しさが胸を打つ。
私の好きなのはむしろ湊谷夢吉の「マルクウ兵器始末」のような、挫折した日本人と無理矢理挫折を強いられた上海の中国人との出遭いを描いた作品であったが、湊谷は惜しくも癌で夭折した。湊谷が亡くなる半年前、札幌を訪れた私は、湊谷に電話して「会わない?」と提案して初対面が可能になる筈だったが、「一寸体調を崩したのでこれから病院に行って来る」と湊谷は検診に出かけたまま入院ということになり、そのまま帰らぬ人となった。湊谷を失って以来私は、やや空虚な気分で数年を過した。