みじか夜や浅瀬にのこる月一片

産卵するトンボ

 園芸店でキュウリの苗を買う。
 蕪村の句に、「みじか夜や浅瀬にのこる月一片(いつぺん)」。
 安永四年四月十二日の句である。
 日の出が五時前で、日没は午後七時を過ぎてからになる。まだ明るい夕方、公園の池に寄る。
 大きなトンボがやって来た。オニヤンマの雌だろうか。池に浮かぶハスの葉に着地すると、後ずさりしながら産卵管を水面に着けた。トンボが産卵する様子を眺める。
 しばらくして、突然にトンボがハスの葉から消えてしまった。???
 ハスの葉の上に目を凝らすと、入れ替わるように大きなトノサマガエルが鎮座しているのだった。一瞬のあいだに、トンボからカエルにハスの葉の上の生き物が変わっていた。
 食べられた? 否(いや)、上手く逃げ去ったのだろう。目にも見えない一瞬の出来事だった。

 オニヤンマ科のトンボ。体長約一〇センチで、日本のトンボでは最大。体は黒色に黄色の横縞がある。幼虫は細流の砂中で育ち、初夏のころに羽化し、道路や水路の上を往復して飛ぶ。  『大辞泉

 PR誌『図書』2009年6月号から、 内山節「挫折と危機のなかで」を読む。
 イギリスの経済学者ウィリアム・ぺティの主著『政治算術』を引用し、トクヴィルの『アメリカのデモクラシー』(松本礼二郎訳、全四冊、岩波文庫)にもふれながら、内山さんの『怯えの時代』で展開されたものの補遺といったところだろうか。