「湯川成一の美しい本たち」8

「ギャルリ プチボワ」にて

 新大阪に着くと、降っていた雨が止んだ。
 大阪駅から地下鉄で四ツ橋まで。冬に逆戻りしたかのような寒風が吹く。四ツ橋筋界隈のニュー堀江という食堂で昼食。堀江公園の咲き始めた桜の下で弁当を食べている人たちを左に見て、「湯川成一湯川書房ゆかりの美術家たち」展の会場、ギャルリ プチボワにたどり着く。
 出かける直前に「仙台が親戚」さんからコメントをもらっていた。数時間後に、会場でお目にかかった。
 出品された本、版画、絵などを福永幸弘氏の説明を聞きながら見てまわる。
 会場で『私の本作り 湯川成一 附友人會宿』皓月書林・刊を購入。
 岡田露愁の『魔笛』、望月通陽の『出埃及記』を見るのは久しぶり。刊行された頃にある画廊で見たものだ。これが湯川書房の刊行とは知らず、画廊主に聞くと京都の方で出しているということだった。
 「本はねころんで」さんのことが話題になる。
 福永さん曰く、「本はねころんで」さんがブログで書かれたことが、今回の展覧会のきっかけになったそうだ。
 会場に並べられた本に、戸田勝久加藤一雄三部作」の『無名の南画家』、『蘆刈』、『京都画壇周邊』が並んでいる。『蘆刈』は肉筆装画・限定13部。『蘆刈』の表紙の絵や『京都画壇周邊』の箱の巻紙の絵などを見ていると、福永さんが「これカステラの箱の絵に似ているでしょう?」と言ってにやりとされる。ユーモアで。
 湯川成一さんの書や絵や年賀状もある。

 湯川書房版の限定本。車谷長吉『抜髪』(横縞布装・背文字が金箔。表紙は黒い文字で「抜髪」)、吉行淳之介『煙突男』、辻邦生『北の岬』(LE CAP DE NORD)(1969年)、辻邦生『風塵』(1970年)、小川国夫『逸民』、杉本秀太郎句集『冬の月』(縦長の和綴じ本)、戯曲本メーテル・ランク『ペレアスとメリザンド杉本秀太郎訳(柄澤齊・木口木版画10葉、1978年)、メーテル・ランク『詩画集 温室』杉本秀太郎訳(岡田露愁・木版画6葉、1982年)、以倉紘平詩集『地球の水辺』(望月通陽・装画)など多数展示されていた。
 壁に湯川書房の文字の木の看板が掲げられていた。
 「ギャルリ プチボワ」を後にして、アメリカ村を抜けてぶらぶら歩く。
 大丸心斎橋店の近くの中尾書店という古書店と、なんばグランド花月近くの波屋書房に立ち寄る。
 どちらも初めて訪れた。波屋書房のレジが銭湯の番台風で驚く。右手の通路の棚の左側に映画、演劇、落語といった芸能関連の本が充実している。右手は文学、美術書が精選されている。
 入り口左側の通路の棚は両側が料理書で圧巻であった。料理書の柴田書店の特約店の看板が掲げられているのに納得する。
 寒風の中を黒門市場を通って大阪削鰹という店と千成屋という店で乾物や食材を購入。
 なんば駅から帰路についた。