映画『路傍の石』

路傍の石

森繁久彌特集」で、久松静児監督の映画『路傍の石』(1960年、東京映画、104分、白黒)を観た。山本有三の小説『路傍の石』を新藤兼人が脚色。
 少年の吾一(太田博之)の父・庄吾(森繁久彌)は土地の訴訟裁判で東京へ行って不在である。
 残された母おれん(原節子)が内職で生計を立てている。生活が苦しいため吾一は中学への進学をあきらめて同級生のいる呉服商伊勢屋へ奉公に出される。 
 奉公しているあいだに母が病気で亡くなり一人になるのだが、奉公先での主人や家族や奉公人からの厳しい仕打ちに遭う。耐えながらの苦境に、奉公先の家族の娘の理不尽な仕打ちについに吾一少年は怒りが心頭に達して奉公先の伊勢屋を辞めて、父のいる東京へと汽車で旅立っていく。
 奉公先の家族の娘の理不尽な仕打ちに反発するシーンに館内から大きな拍手があがった。苦境とそれを乗り越えていく少年の吾一の様子を描く物語に引き込まれた。

 吾一少年のいわば安全基地といえるのが、小学校の先生(三橋達也)と近所の大家で、いなば屋という本屋の女主人とその息子(滝田裕介)が暖かく吾一少年を見守り支援するのだった。
 映画は、吾一少年が生まれ育った町を去って行くところで終わっている。
 シネマスコープでフィルムの状態がとても良い。新藤兼人の脚色に注目する。
 番頭忠助を山茶花究が演じている。嫌味な役どころだが、嫌味さが上手い。