松田定次監督の映画『赤穂浪士 天の巻・地の巻』(1956年、東映・京都、151分、カラー)である。
昭和三十一年公開作品で、脚本が新藤兼人。
市川右太衛門、片岡千恵蔵をはじめとするオールスター・キャストで、東映創立5周年を記念して製作された大作。大佛次郎の同名小説を新藤兼人が脚色し、時代劇の第一人者である松田定次が監督。浪人・堀田隼人が赤穂浪士たちに寄せる共感が、ドラマの軸の一つとなっている。
天の巻と地の巻の間に、10分の休憩があった。
東映が創立して五周年記念のオールスター出演というだけあって、見ごたえがある。
大石内蔵助(市川右太衛門)が、討ち入りを決意して京から江戸へ下る道中に、九条家用人・立花左近を名乗っていた。だが、本物の九条家用人・立花左近(片岡千恵蔵)の一行も東海道を下っていて、同じ宿にて鉢合わせになる。
市川右太衛門と片岡千恵蔵二人が無言で目と目で火花を散らすシーンが迫力あり印象的だ。
貫禄の演技である。
浪人の堀田隼人(大友柳太朗)、盗賊の蜘蛛の陣十郎(進藤英太郎)、お仙(高千穂ひづる)、目明かしの目玉の金助(河野秋武)らは密偵として上杉藩の江戸家老・千坂兵部(小杉勇)に雇われたが、討ち入りの日、堀田隼人が内蔵助の心意気に共鳴して千坂兵部を裏切り、目玉の金助を切るシーンも印象的だ。
出演
月形龍之介 吉良上野介
片岡千恵蔵 立花左近
薄田研二 堀部弥兵衛
加藤嘉 小野寺十内
進藤英太郎 蜘蛛の陣十郎
中村錦之助 小山田庄左衛門
大友柳太朗 堀田隼人
東千代之介 浅野内匠頭
三浦光子 大石妻りく
高千穂ひづる お仙
田代百合子 さち
星美智子 安兵衛の妻 幸
千原しのぶ 夕露太夫
伏見扇太郎 大石主税
市川右太衛門 大石内蔵助