映画『草原の女』と「冬のモンゴル」

草原の女

 晴れて朝の最低気温は1℃、10℃まで気温が上がるが夕方にかけて冷え込む。
 「中国映画特集」の一本、ハスチョロー監督の映画『草原の女』(2000年、中国、91分、カラー)を観に寄る。観客は20人ほど。
 出演はハースカオワ、トゥメン、デンジバヤル、バオハンルン。
 12月プログラムに、
 内モンゴルの草原地帯で、ソルは息子のアヨールと暮している。ある日、彼女の前に、見知らぬ男・ガルが現れ、次第に親しくなっていく。が、都会に行ったまま何年も帰って来なかった夫・ラシが突然戻ってくる・・・。厳寒の草原でたくましく生きる女性の姿を描く。
 冒頭、牛の乳房から乳を絞っている女(ソル)がいる。乳絞りを終えると、子牛が親牛に駆け寄って来て乳を吸う。ゲルと呼ばれる家に入ると、牛乳を大きな鍋で熱してかき混ぜる作業をする。
 牛から搾乳する時に、牛の足を動かないようにヒモでくくりつけている。
 ゲルの周(まわ)り近くに、羊を入れる木で造った柵に、30頭くらいの数の羊が収容されている。
 ゲルの中で、ソルは羊の毛からフェルトを作る。
 ソルは九歳くらいの男の子アヨールを育てている。
 ある日、羊の番をするのに、雇ってくれと言う、流れ者のような正体不明の男がやって来る。
 初めは断っていた。男は行くあてもないのか、近くに簡単なつくりのゲルを作ると住み着いてしまった。
 息子のアヨールは最初は見知らぬ男ガルを怖がっていたが、ある日ソルが熱を出して体調が悪くなった時に、心配したアヨールはガルに頼み、ガルの運転するトラクターで町の病院へ母親ソルを運ぶのを手伝ってもらう。途中でトラクターが動けなくなるが、ソルを抱えて病院まで運んでくれ、ソルは点滴を受けて無事に回復する。
 このことを契機に二人は親密になるのだが、新年を迎える時期に突然、ソルの消息不明だった夫ラシが帰って来るのだった。
 ガルは焚き火を見ると、火を消してくれと懇願する。そして自ら火を消してしまうのだった。
過去に自分が留守の時に、妻子が放火による火災で亡くなったというトラウマがあり、その放火の犯人と疑われ投獄された過去がある・・・。
 ガルは、その犯人の残したライターを手がかりに、妻子を殺した犯人を捜しているのだった。
 突然戻って来た夫のラシに当惑するソル、夫はソルと離婚して息子のアヨールを連れて町へ行くと言う。
 町で他の女と結婚するつもりだと言う。
 ガルはなついたアヨールをソルの手元に引き止めようとする。
 ラシがアヨールを連れ去ったのを知ったガルは追いかけて、アヨールを連れ戻すのだった。
 ミステリアスな筋書きで、ピストル型のライターをガルが持っているのを息子のアヨールから知らされて、ソルがガルのゲル(家)の中でライターを手にとって見るシーンが、ラストでガルの妻子が放火で死んだ事件の真犯人が誰かという伏線になっている。
 親子の絆(きずな)と恋のゆくえ、ガルの妻子を殺した犯人探しという謎解きがあり楽しめた。
 映画の前半は、まだ秋の季節だが乾し草を集めたり羊の入る柵を作ったりしているが、後半になると、大地が一面の雪景色になった白い世界で、厳冬の内モンゴルのゲル(家)での生活が見られる。
 映画を見終わって、磯野富士子著「冬のモンゴル」(中公文庫)を読みたくなった。

冬のモンゴル (中公文庫)

冬のモンゴル (中公文庫)