29日、シネマテーク・プロジェクト第4弾「フレデリック・ワイズマンのすべて」の一本、フレデリック・ワイズマン監督の映画『シナイ半島監視団』(1978年、127分、白黒)を観に出かけた。
プログラムから引用。
エジプトとイスラエルの間のシナイ緩衝地帯で、監視の任務を遂行する米軍の小隊。自転車で見回る他に大してすることもない彼らは、ときにこの地を西部劇の「西部」になぞらえて無為をやり過ごす。「アメリカの外のアメリカ」として「アメリカらしさ」が奇妙に凝縮されたこの場所を、荒涼とした広大な砂漠のごく小さな一点として映像に収めている。
冒頭、荒涼とした砂漠の中の一本道をトラックが走っている。
その様子を 山の上の監視基地から監視している一団がいる。
イスラエルとエジプトの第四次中東戦争の停戦交渉で設けられた非武装地帯を監視する任務である。
シナイ半島監視団(SFM)は米国国際開発庁に所属する国務省の職員とテキサス州の民間会社からの契約社員の混成団で、この無人地帯を監視している。
訪れるものはなく、ただアンゴラ軍の監視団部隊がやって来る。
彼らの無作法による監視基地の職員の使う施設での勝手な飲食で、迷惑するといった椿事がある。
監視の仕事は、機器を点検するというまことに単調な何も起こらない平穏な日常なのだが、それゆえにちょっとした些細な変化に敏感になってもいる。
そういった憂さを晴らすかのように、テキサス出身の監視団員らはパーティで余興に、ブーツ(長革靴)にビールを注いで、一気飲みを順番にやり、大騒ぎをする。
テキサスの故郷の歌を歌ったり、演奏して踊ったりとお祭騒ぎで息抜きをする。
そして、いつ国に帰れるかそれを楽しみに監視の仕事をつづけている。
ラストに、国連軍の一部であるアンゴラ軍の部隊が、その功績を認められて国連から表彰される儀式がある。
鼓笛演奏付きのにぎやかで規律の取れたアンゴラ軍部隊の行進が見事だ。見どころの一つだろう。
そして、映画は再び、冒頭でも映された荒涼とした砂漠の中の一本道の光景を映して終わる。
《ワイズマンは『パナマ運河地帯』を撮った後、すぐにシナイ半島に移動して撮影している。》(カタログ「フレデリック・ワイズマンのすべて」より)
この時期のフレデリック・ワイズマンは海外へ出ているアメリカ社会の一部を執拗に撮影しているようだ。