フレデリック・ワイズマン監督の映画『福祉』

福祉

 フレデリック・ワイズマン監督の映画『福祉』(1975年、167分、白黒)を観る。原題は「Welfare」。
 シネマテーク・プロジェクト第4弾「フレデリック・ワイズマンのすべて」の一本である。

 プログラムから引用。
 ニューヨーク市のウェイヴァリー福祉センターを舞台に福祉行政のありようを描いた作品。住宅問題、失業問題、医療問題、幼児虐待問題、老人問題など、多様な問題と係わる福祉システムの性質を検証し、福祉活動家の置かれている状況、受益者の問題、福祉の本質など浮かび上がらせる。 
 生活保護の申請者が福祉センター職員とやりとりするのだが、何ヶ月もたらいまわしにされていると不平不満を言う。早く認可してくれと迫る者、ニューヨークで住宅の家賃が払えないで今までの支給額を上げてくれと迫るが、安いところへ引っ越しを求める職員と駆け引きの問答が繰り広げられる。プライバシーにかかわるようなシーンも撮影されているが、登場人物が誰もカメラを意識していないように見える。
 ラストに、44歳7ヶ月(?)の失業中だという男が、サミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」を持ち出して、哲学的な演説を身振りをまじえて始めたのが可笑しかった。芝居がかっていて面白かった。
 いままで22年間勉強し、17年間公務員として国家のために働いてきたが・・・、とまるで役者のように語りづづけるのだった。
 深刻でありながら、滑稽でもあるという絶妙なショットを撮っている。
 独特のユーモアだろう。フレデリック・ワイズマン監督のこのセンスは面白い。