午後の遺言状

 「新藤兼人 百年の軌跡」という番組が毎週月曜から金曜にかけてFMちゅーピー(76.6MHz)で放送されている。
 この四月に生誕百年を迎えられる新藤兼人の49作品を解説する番組である。

 今夜は、『午後の遺言状』(1995年)について放送された。
 解説は、八丁座・サロンシネマ・シネツイン総支配人の住岡正明氏。
 この作品は多くの賞を受賞した。キネマ旬報ベストテン第1位に輝いた作品で、新藤監督の中ではもっとも話題になりヒットした作品で、後に舞台にもなった。
 お二人とも広島出身ということもあり、高齢になっていたということもあり、杉村春子さんを主人公にしてもう一本撮りたいと思われた新藤監督が、杉村春子さんに頼み込んで出演してもらい作られた映画で、当時病気で乙羽信子さんの命に限りがあるから急いで作られた。
 乙羽さんがもうすこし丁寧に時間をかけてください、と言うほど、新藤さんはとんとんと一年半で撮りあげた。
 主演の杉村春子さんと共演の乙羽信子さんの遺作になった作品で、映画製作中の杉村春子さんの立ち居振る舞いのさすがとおもわせられるエピソードなど語られる。
 老女優(杉村春子)をめぐる様々な人間模様がある映画。


 「新藤監督は映画の題名の付け方がうまいですよね。」
 「そうですね。おっしゃる通り。」
 「この人生を午前と午後に区切って、この『午後の遺言状』なんて、なかなか考えても出てきませんよね。この時、新藤兼人監督83歳で、杉村さんが86歳で、実は杉村春子さん二年後に88歳でお亡くなりになってましてですね。乙羽信子さんがこの時70歳で、もしかしたらこの『午後の遺言状』って、新藤さんご自身の思いだったのかなという気もしますよね。」

 次回は『生きたい』である。
 
 聞き手はシネマ・エッセイスト鈴木由貴子さん。