《5月29日は、新藤兼人監督が亡くなられて一年になります。新藤監督の映画人生を偲んで、新藤監督が80歳代、90歳代の時に撮られた3作品を上映します。》
29日、「新藤兼人監督を偲んで」の上映作品からの1本、『三文役者』(2000年、近代映画協会、123分、カラー)を観に出かけた。
立ち見客が出る。満席状態だった。
出演は、竹中直人、荻野目慶子、吉田日出子、乙羽信子。
5月プログラムに、
新藤作品には欠かせない存在で、名脇役として日本映画を支えた殿山泰司。無類の酒好きが騒動を巻き起こし、私生活では妻と愛人の板ばさみにあう。そんな破天荒な役者人生を、殿山泰司になりきった竹中直人の主演で描く。
タイちゃんこと殿山泰司を竹中直人、赤坂の人を荻野目慶子、鎌倉の人を吉田日出子、乙羽信子は映画のナレーション役で出演している。
この作品は『三文役者の死』の映画化のようだ。
新藤兼人著『三文役者の死』1991年(岩波同時代ライブラリー)は、殿山泰司との交友五十年の新藤監督の書き下ろし評伝である。
大正四年(1915年)生まれのタイちゃんと明治四十五年(1912年)生まれの新藤監督。
映画の方は、冒頭に殿山泰司主演の『裸の島』の映画の引用シーンから始まり、林光の音楽が聞えて来る。
映画は、『三文役者の死』で書かれたエピソードを描きながら、タイちゃんこと殿山泰司の人生とは何だったのか、新藤監督にとって大事だった人を作品化している。
印象的な『裸の島』、『愛妻物語』、『銀心中』、『人間』、『母』、『鬼婆』、『悪党』の白黒のフィルムからの映像が引用される。
これらの白黒フィルムに、『愛妻物語』に宇野重吉、『母』に杉村春子、『悪党』に岸田今日子の姿が観られる。
竹中直人が殿山泰司になりきって熱演し、「仕事に行くぞ! 仕事に行くぞ!」というセリフを毎日アパートを出るたびに近所に言いふらすのだが、本当に仕事が入って出かける日、同じセリフを言うと、近所のおばさんがウルサイわねと怒って言うシーンが可笑しくて笑えた。館内も爆笑。
コミカルな一シーンである。
新藤監督の映画制作の方法は、スタジオを使わないで合宿方式によるのだが、『裸の島』、『人間』、『母』、『悪党』でのタイちゃんのエピソードも交えて描いている。
筋書きは、ほぼ『三文役者の死』に沿っている。

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