「新藤兼人 百年の軌跡」で、28日に上映の三本目の作品。
新藤兼人監督の『悲しみは女だけに』(1958年、大映、105分、白黒)を観た。
出演は、田中絹代、京マチ子、望月優子、水戸光子、市川和子、乙羽信子、杉村春子、小沢栄太郎、船越英二、宇野重吉、殿山泰司。音楽は伊福部昭。
4月プログラムから引用すると、
新藤監督が自作の戯曲を映画化。アメリカに移民として渡った姉が、尾道の兄の家に30年ぶりに帰って来る。それぞれに悩みを抱え、姉の財力に頼ろうとする家族の間に波紋が生じる。新藤監督の兄や姉をモデルに、舞台劇のような演出を取り入れた野心作。
フィルムは35ミリではなく16ミリでの上映だった。
アメリカへ移民で渡った長姉の秀代(田中絹代)が戦争をはさんで30年ぶりに尾道に戻って来た。それを迎える一家の話なのだが、セリフが多い。
長男政夫(小沢栄太郎)の尾道の家に、秀代の妹春江(水戸光子)、政夫の次女芳子(市川和子)らが会いに集まって来た。
政夫の長男浩(船越英二)と長女道子(京マチ子)も戻って来る。
政夫の妻くに子(望月優子)は後妻で、浩と道子と芳子は先妻千代子(杉村春子)の子である。
田中絹代の姉が日本に帰って来た理由は一家がどうなっていたかという心配と両親の墓参りだったのだが・・・。
秀代(田中絹代)の甥(おい)と姪(めい)にあたる浩と道子と芳子もそれぞれ問題をかかえている。
秀代の語るアメリカでの日系人の収容所での生活、無一物からの戦後の再出発と話がはずむ。
春江は原爆にあったが助かって再婚して広島にいる。
春江(水戸光子)の夫赤松(殿山泰司)も尾道へ広島から商用のついでに寄ったと顔を出した。
それに加えて、政夫(小沢栄太郎)の別れた前妻千代子(杉村春子)が、毎月支払われる慰謝料が三ヵ月も支払われていないので貰いに来たと訪れた。
経済的に困窮している政夫と千代子との意地と確執が繰り広げられる。
集まった者は、みんなアメリカ帰りの秀代(田中絹代)の財力に頼ろうとするのだった。
一人暗く悩んでいたようにみえた姪の道子(京マチ子)のみを除いて・・・。
道子は一人、神戸から迎えに来た岸本(宇野重吉)の元へ戻ろうと決意した。
ラストは舞台劇のようなシーンで終わるが、家族の絆をめぐる確執が見事で堪能した。
小沢栄太郎や田中絹代、そして脇役も好演している。