新藤兼人の映画『鉄輪』

鉄輪(かなわ)

 11日、「新藤兼人 百年の軌跡」での一本、新藤兼人監督の映画『鉄輪(かなわ)』(1972年、近代映画協会、91分、カラー)を観た。
 出演は、乙羽信子観世栄夫フラワー・メグ殿山泰司
 撮影が黒田清巳、音楽は林光である。
 
 5月プログラムより引用。 

平安時代、夫に捨てられた妻が丑の刻参りをして夫に呪をかける。一方、現代では若い女と一緒になった夫を妻が執拗に追い回す。能の演目「鉄輪」をもとに、平安時代の物語と現代のドラマを交錯させながら、嫉妬のテーマを浮かび上がらせる。

 平安時代の夫(観世栄夫)に捨てられた妻(乙羽信子)が、夫とその愛人を呪う。
 鞍馬の貴船神社に丑の刻参りに疾走して深夜たどり着き、巨木に取り付けた人形に釘を打ち付ける。
 鬼気迫る顔で、何度も執拗に怨念を込めて槌を振り下ろすのだった。
 
 現代の夫婦(観世栄夫乙羽信子)で、夫が妻に離婚しますと妻に告げる。
 だが、妻は離婚はしません! の一点張りで夫とその愛人(フラワー・メグ)がいる部屋へ執拗に無言電話をかけ続ける。嫉妬心に駆られた妻は二人が逃げても逃げても、どこまでも二人のいる場所を見つけて、無言電話のベルを鳴り響かせるのだった。

 現代劇の中で執拗な無言電話と時代劇での呪いの人形へ釘を打つ行為を繰り返し映す。
 平安時代と現代の夫婦それぞれの妻からの嫉妬心が描かれる。それに能の舞台の演目「鉄輪」の謡曲と囃子(はやし)に合わせて演じる舞、この三つが交錯しながら物語は展開されるのだ。
 なまなましい緊迫感と妖艶なカラー映像美が印象的な作品だった。

 脇役に現代の占い師を殿山泰司筮竹(ぜいちく)を持って演じている。