マキノ正博監督の映画『鴛鴦歌合戦』

 1912(大正元)年に、エム・パテー、吉沢商会、横田商会、福宝堂の4社が合併して、日本活動写真株式会社(日活)が誕生しました。日本映画の歩みと重なる長い歴史を持つ日活は、2012(平成24)年に創業100周年を迎えました。それを記念して、「幕末太陽傳」のデジタル修復や、アメリカやフランスなど海外での日活作品の巡回上映が行われ、国内でも各地で日活映画特集が開催されました。100年を超えて次の時代へ歩みを進める日活映画のこれまでを、1月から2月の2ヵ月にわたって、映像文化ライブラリーで特集します。(1月プログラムより) 
 16日、マキノ正博監督の映画『鴛鴦歌合戦』(1939年、日活、69分、白黒)を観た。老若観客が多い。
 日活京都撮影所で制作。撮影を宮川一夫が担当。 

 出演は、ディック・ミネ片岡千恵蔵志村喬市川春代、深水藤子、服部富子。 

マキノ正博監督による時代劇ミュージカルの逸品。千恵蔵扮する貧乏浪人をめぐる恋の鞘当てを軽快な歌と音楽にのせて描く。ディック・ミネ志村喬の歌が楽しく、エンターテインメント感覚あふれる一編。

 冒頭、家来を連れて若殿様のディック・ミネが家来と共に陽気に歌いながら始まるところから、傘を乾かす広場で片岡千恵蔵をはじめ登場人物が全員そろって傘を持って陽気に歌い踊るラストの場面まで文句なく楽しい。

 ちょっと調子よくおどけていて気さくな若殿様のディック・ミネと、浅井という浪人役の片岡千恵蔵の二人が長屋で傘張りをしている志村狂斎(志村喬)の娘お春(市川春代)をめぐる恋の鞘当てを軽快なテンポで歌と音楽で描く。
 香川屋という商家の娘(服部富子)、浪人・浅井の許婚(いいなずけ)の深水藤子らがお春(市川春代)の恋の駆け引きに加わる。
 「とかく浮き世はままならぬ、日傘さす人、作る人・・・」と映画の中で、片岡千恵蔵市川春代服部富子の三人が歌う場面が気に入りました。
 茶碗を片手に掲げて歌う骨董好きの志村狂斎役の志村喬が美声ですね。