溝口健二監督の映画『元禄忠臣蔵 前篇』

 「時代劇特集2014」で上映された作品の一本、溝口健二監督の映画『元禄忠臣蔵 前篇』(1941年、興亜映画、松竹京都、112分、白黒)を観る。
 昭和16年公開の作品である。
 出演は、河原崎長十郎中村翫右衛門河原崎國太郎、三浦光子、小杉勇*1

劇作家真山青果のライフワークともいえる戯曲の映画化。史実に忠実な原作を受けて、映画の時代考証も厳格をきわめ、原寸大の松の廊下が登場することはあまりにも有名。ワン・シーン=ワン・ショットのスタイルを徹底させた重厚な作品となっている。(特集パンフレットより。)


 大石内蔵助河原崎長十郎浅野内匠頭嵐芳三郎、多門伝八郎を小杉勇、徳川綱豊を市川右太衛門、瑶泉院を三浦光子、武林唯七市川莚司(戦後、加東大介と改名)、大石の妻りくを山岸しづ江、井関徳兵衛を羅門光三郎が演じている。
 冒頭の松の廊下の場面は庭に面した広大な回廊のような建築で、横への移動撮影で吉良上野介浅野内匠頭の刃傷(にんじょう)事件を詳細にドキュメンタリー風に撮っている。
 ただ、音楽やせりふに雑音が混じるのが気になる。
 大作であるのだが、時代考証にこだわっているためか、あまり面白くなかった。
 脚色を依田義賢と原健一郎。建築監督を新藤兼人が担当している。
 この時期の新藤兼人は、田中重雄監督の映画『北極光』(1941年、新興キネマ、108分、白黒)で、潤色・美術も担当している。

*1:杉勇は、昭和13年の田坂具隆監督の映画『五人の斥候兵』(1938年、日活、72分、白黒)に出演した。戦後、蔵原惟繕(これよし)監督の映画『俺は待ってるぜ』(1957年、日活、90分、白黒)は、裕次郎ブームのきっかけになった日活のアクション映画で、主演が石原裕次郎北原三枝である。石原のレストランREEFの常連客のひとり内科医役を小杉勇が演じている。その存在感ある演技は印象に残る。