「河童供養 十句」

 
 雨上がりのしずく。
 シオカラトンボがとまっていた。数センチまで寄っても逃げる気配がない。
 

トンボ科の昆虫。中形で最も普通のトンボ。四〜九月に現れ、成熟した雄は腹に青白粉を装う。雌は淡黄褐色でムギワラトンボという。  『大辞泉

  

 
 河童忌というのは、芥川竜之介の命日の7月24日であります。
 生前、好んで河童の絵を描き、作品に「河童」があるので、河童忌となった。
 飯田蛇笏の『霊芝』に「河童供養 十句」という俳句がありますが、これは昭和九年の句です。
 前書きは、「――澄江堂我鬼の霊に――」とあり、


 河童に梅天の亡龍之介
 ほたる火をふくみてきたる河童子
 水神に遅月いでぬ芋畠
 河童の手がけてたてり大魚籃
 河童祭山月これを照らしけり
 河童の恋路に月の薔薇ちれる
 濠の月青バスに乗る河童かな
 水虎鳴く卯の花月の夜明けかな
 童子落月つるす夜の秋
 河童の供養句つづる立夏かな