久松静児監督の映画「おふくろ」


 「生誕100年 宇野重吉特集」からの一本、久松静児監督の映画『おふくろ』(1955年、日活、97分、白黒)を観る。
 出演は、望月優子木村功左幸子宇野重吉二木てるみ宍戸錠沢村貞子、桂典子、千石規子、藤代鮎子。

 田中千禾夫の戯曲の映画化。息子の英一郎は、仙台の銀行に就職が決まるが、東京で暮したがる母には言い出しにくかった。やがて母も仙台行きを決意するが、その時母子の悲劇が訪れる。母と息子の心情をしみじみと描いた作品。 (特集パンフレットより。)

 物語は、望月優子が演じる母の目を通して、息子の英一郎(木村功)との日々を回想する形で展開される。
 母もの映画の一本で、戦争で夫を失い戦後をけなげに子供を育ててきた母親(望月優子)は息子の就職が決まり喜んだ。
 それを祝って英一郎らは伊豆へ、英一郎が母に内緒で三年間アルバイトで家庭教師をしていた家族や学友らと出かけた。
 その帰り道、英一郎は突然に具合がわるくなり発病し入院した。
 看病むなしく息を引き取る。
 親にも知らせず、家庭教師のアルバイトをして稼いだお金で自分に生命保険を掛けていた息子、自分の知らない世界に生きていたことを母は初めて知るのだった。

 左幸子が英一郎の妹で、活発な女子高生で走るのが得意で速い。木登りも得意だ。兄妹で喧嘩ばかりをしている。
 宇野重吉は英一郎の叔父で九州の島原から上京して来た時に、泊まり酒を飲んで民謡を陽気に歌い、しきりに一家に故郷へ帰れよと勧める。
 宍戸錠が英一郎の学友で、形見の英一郎の背広を着せてもらい、望月の前でその姿を見せる。望月は、宍戸錠の背広姿に、英一郎の面影を見るのだった。

 ちっちゃな女の子を二木てるみが子役で出演している。
 英一郎のアルバイト先の母親が沢村貞子、その娘が桂典子だ。
 宍戸錠上着を脱いで、物干し場の上から下の方の高校の校庭にいる女子高校生の前でラジオ体操をするのだが、その滑稽なしぐさに笑った。宍戸錠がとても若い。