「詐欺師の勉強あるいは遊戯精神の綺想」のこと

 種村季弘単行本未収録論集『詐欺師の勉強あるいは遊戯精神の綺想』の巻末の「解題」と「種村季弘略伝」を齋藤靖朗氏が書いている。

 冒頭の「落魄(らくはく)の読書人生」は、青年向けの講演を文章にしたもののようだ。
 原題は、「この世はぺてんとデカダンス・・・・・・ああ、落魄の読書人生」で、種村氏の若いときの体験が語られている。

 一部引用してみる。

 《若い人って、新しいもの、今までになかったものに関心を持つでしょ。ただそういうものの中には、マスコミとかがお膳立てしたガセネタが当然あるわけだよ。それをどうやって見分けるかは、詐欺師の勉強をやればわかる。》  31ページ

 《そういう意味では、本を読むことだって、目的化しない方がいいと思うんだ。
 幸田露伴って人は大変博学な人で・・・・・・氷っていうのは、いっぺんに凍るんじゃなくて、水の上にゴミが浮いていて、それがまず凍る。それがいくつもできて、それが線でつながって、一気に氷になるわけ。だから知識っていうのも。本なんかを点々と読んでいくんだけど、ある瞬間にそれがバッとつながるってなことを言ってる。》  32ページ