「ガダルカナルさよなら航海記」のこと

 公園の池にショウジョウトンボを見た。数センチまでトンボに近寄っても、逃げる気配がない。 

トンボ科の昆虫。雄は全体に鮮やかな赤色、雌は橙(だいだい)色。夏、池沼に普通に見られる。本州以南、アジア東部の熱帯に広く分布。  『大辞泉

 阿川弘之著『女王陛下の阿房船』に所収のエッセイ「ガダルカナルさよなら航海記」は、阿川弘之北杜夫の二人が参加することになったのは、今回のメラネシアの島々を訪れるクルーズ運航会社から全体の三割強、二十数名の日本人が参加するので何か参考になる南洋旅行の話でもしてほしいという要請からであった。 
 《三十余年前の旧作だが、マンボウには「南太平洋ひるね旅」と題する著書があり、私も、二十七年前、山本五十六長官戦死のあとをたずねてこちら方面旅して歩いた経験を持っている。ただ、そんな昔話が果して船客たちの「参考」になるのか、マンボウも私もあんまり自信が無いし、二十何名の日本人が何を主目的として今次航海に参加するのかも、よく分かっていなかった。》  186ページ

 この十日間の探険船「フロンティア・スピリット」号による船旅は、阿川弘之の二十七年前のソロモン紀行と重ね合わせると興味深い。

 《私も、二十七年前、山本五十六長官戦死のあとをたずねてこちら方面旅して歩いた経験を持っている。》と書いている。

 二十七年前の経験というのは、ブーゲンビル島のブインから地元の酋長や若者らとランドーローバーで墜落機のあるという場所に向かい、ジャングルに若者たちと蕃刀や斧で切り拓いて山本五十六搭乗機を見つける顛末を書いた『山本元帥! 阿川大尉が参りました』という題の紀行のことですね。飛行機や船やブインの航空会社のエージェントのオーストラリア人の中国人の細君に悪戦苦闘するエピソードなどがおもしろかった。

女王陛下の阿房船 (講談社文庫)

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