吉村昭の戦争小説について

 新潮社のPR雑誌「波」12月号で、川本三郎の「吉村昭を読む」を読んだ。
 「敗者としての戦犯を描く」と題して吉村昭の戦争小説について論じている。
 論じられているのは、吉村昭の『遠い日の戦争』で、主人公は昭和二十年八月十五日の直後、捕虜になったB29の搭乗員をひそかに処刑した。戦後、アメリカ占領下に主人公は戦犯にされ米軍(進駐軍)から逃げることを決意する。
 
 一部引用すると、

 《四国から、大阪、神戸、そして姫路へ。元陸軍中尉が米軍に捕えられ犬死したくないために、命がけで逃げる。興味深いことに、この逃避行は、戦後の戦犯と、戦時中の徴兵忌避者という違いはあるものの、兵隊に取られたくないために身をやつして日本各地を逃げ続ける男を描いた丸谷才一の『笹まくら』とよく似ている。どちらも、絶大な権力からの一個人の必死の逃亡を主題にしている。》  47ページ

遠い日の戦争 (新潮文庫)

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