ゴダール特集号から

 「ユリイカ」2023年1月臨時増刊号「総特集=ジャン=リュック・ゴダール」からの話題になるのだが、掲載されているひとつから「ゴダール回顧的断章」(中条省平)を読んだ。

 気になった箇所から引用すると、

ゴダールは、映画という表象の詐術そのものに苛立っていた。その結果、何も表象しないあの黒の画面に到達してしまう。ここまでくればデッドエンドだ。じっさい、ゴダールは商業映画の世界から姿を消し、日本では一九八三年の『パッション』までゴダールの映画をほとんど見ることができなくなった。》  85ページ

 

http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3767

 

 

松籟の下紅梅は軒の花

 快晴。最低気温が2℃で、最高気温は16℃。
 気象台から春一番の発表があった。
 梅の花が見頃を迎えているとのことで梅の名所を訪れた。満開の花びらに近づくと梅の好い香りが漂ってきた。園内はそぞろ歩きの人で行き交う光景が見られる。バラ科の落葉高木。

 

 「松籟の下紅梅は軒の花

 中村草田男の俳句である。昭和十六年(1941年)の句とあるが、《「青露變」に先立つ部分は、第三句集「萬緑」に納めし期間の作品中よりの拾遺をも含む。》という但し書きがある。



 山田稔の『某月某日 シネマのある日常』を読了。
 《『シネマのある風景』につづく極私的シネマ日誌。》

 

シネマのある風景 | みすず書房 (msz.co.jp)

読書アンケート

 みすず書房のPR誌「みすず」1・2月合併号の読書アンケートを手に取ってみた。

 2023年8月号をもって休刊の予定とみすず書房からのお知らせがあった。

 どんな本がアンケートにあるか眺めてみた。

 

 

 山田稔氏の奈良有里『夕暮れに夜明けの歌をーー文学を探しにロシアに行く』(イースト・プレス)、津野海太郎『かれが最後に書いた本』(新潮社)および津野海太郎『編集の提案』(黒鳥社)

 坂内徳明氏の長谷川櫂『俳句と人間』(岩波新書)、落合勝人『林達夫 編集の精神』(岩波書店

 松家仁之氏の奈良有里『夕暮れに夜明けの歌をーー文学を探しにロシアへ行く』(イースト・プレス)、那須耕介『社会と自分のあいだの難関』(編集グループSURE)、飯野孝行・南伸坊『いい絵だな』(集英社インターナショナル)、高橋秀実『道徳教室ーーいい人じゃなきゃダメですか』(ポプラ社

 

       

      

 

ラジオ千夜一話から

 NHKラジオ深夜便に、「五木寛之のラジオ千夜一話」という放送番組があります。これまで多く対談をされている五木さんが、特別に印象に残っている対談が羽仁五郎さんとであったと話されていました。

 そういえば、五木寛之『箱舟の去ったあと』という対談集にたしか羽仁五郎との対談があったことを思いだしました。どんな対談だったか、読んでみましょう。

 羽仁五郎といえば、落合勝人さんの『林達夫 編集の精神』にも、確か触れられていたようなので確かめてみましょう。

 

 

 

 

 

 

映画「恋するアナイス」

フランス映画の現在 vol.04
ジャン=マルク・ラランヌが選ぶ2020/2022ベストの一本。

ジャン=マルク・ラランヌによるセレクション(「レザンロキュプティーブル」編集長)
企画協力・ジャン=マルク・ラランヌJean-Marc Lalanne。

 シャルリーヌ・ブルジョワ=タケ監督の映画「恋するアナイス」(2021年、フランス、98分、カラー、Blu-ray、日本語字幕)
出演は、アナイス・ドゥムースティエ、ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ、ドゥニ・ポダリデス。

「16世紀における情熱」についての博論を書き終えないまま、将来も恋愛も見通しがたたないでいる30歳のアナイス。ある日、アナイスはダニエルという年配の男性とつき合い始めるが、しだいにダニエルの伴侶であるエミリーに魅了されていく。第74回カンヌ国際映画祭批評家週間で注目を集めたシャルリーヌ・ブルジョワ=タケの長編デビュー作。自然の中で解放され、しだいに惹かれ合う二人の女性たちが繊細かつ官能的に描かれている。(パンフレットより)

 上映後、坂本安美氏による映画「恋するアナイス」作品について解説のアフタートークがあった。

 この映画は主人公のアナイスが冒頭から走る走る、エネルギッシュに動く。コメディタッチのエピソードもある。カメラは好奇心と本能のままに生きる悩むアナイスを追いかける。そのなかで出会ったダニエルの伴侶にアナイスは魅了されていく。ラストのはるか海を眼下に望む海岸の大自然を二人が歩む姿が印象的だった。

 

 

マリノス・カルティキス監督の映画「老人」

 8月に「EUフィルムデーズ2022映画でつながる、ヨーロッパ」映画祭で上映された一本。

 マリノス・カルティキス監督の映画「老人」(2020年、キプロスギリシャ、84分、カラー、Blu-rayギリシャ語、日本語字幕)を鑑賞。

 老いと孤独をテーマにした作品。主人公のテオハリスは一人暮らしの老人。毎日、家から病院へ向かい、外来室のベンチで眠る。誰にも気づかれることなく朝になると自分の家に戻る生活を過ごしていた。ある日のこと、病院の若い看護師エブゲニアが外来室に眠っていたテオハリスの存在に気づいた。彼女は老人のその様子に興味を持ち話しかけはじめたが、最初は彼女の申し立てに拒否しようとしていたのだが、いつしか、しだいに二人の間の溝は埋まり、じょじょに信頼関係が出来上がり始めるのだった。老いと孤独の疎外感を描いたキプロス映画。

 

 

 

 

「夕子ちゃんの近道」

 中央公論新社から出ていた文芸誌に「アンデル」という名前の小冊子があったのをご記憶の方は今もいるだろうか。創刊は2015年1月号からである。創刊号からはじまった連載小説に、長嶋有の「三の隣は五号室」というタイトルの小説があって、毎回愉しみにしていた。その長嶋有の小説「夕子ちゃんの近道」を読んだ。文庫本の解説が大江健三郎

 長嶋有の「三の隣は五号室」は「部屋」から見た小説といえる。

 「夕子ちゃんの近道」について語るなら、この小説も古道具屋の「部屋」から見た小説といえるのではなかろうか。

 ラストに付け加えられたパリへの旅行の描写もホテルの部屋からみた光景である。