「夕子ちゃんの近道」

 中央公論新社から出ていた文芸誌に「アンデル」という名前の小冊子があったのをご記憶の方は今もいるだろうか。創刊は2015年1月号からである。創刊号からはじまった連載小説に、長嶋有の「三の隣は五号室」というタイトルの小説があって、毎回愉しみにしていた。その長嶋有の小説「夕子ちゃんの近道」を読んだ。文庫本の解説が大江健三郎

 長嶋有の「三の隣は五号室」は「部屋」から見た小説といえる。

 「夕子ちゃんの近道」について語るなら、この小説も古道具屋の「部屋」から見た小説といえるのではなかろうか。

 ラストに付け加えられたパリへの旅行の描写もホテルの部屋からみた光景である。