ラビリンスとしての古本屋

月と夜桜

 五日は二十四節気のひとつ清明(せいめい)だった。春分から地球が太陽の周りを十五度ほど回ったことになる。清明とは、『大辞泉』によると、

 二十四節気の一。四月五日ごろ。このころ、天地がすがすがしく明るい空気に満ちるという。

 午後五時ごろの青空に、月が見えた。東の方に高く昇っていて、西空には太陽が輝いている。黄砂のために遠くが霞んで見えた。「菜の花や月は東に日は西に」。安永三年(1774年)三月二十三日の蕪村の句である。ちょうど今日の月と日(太陽)の位置関係にぴったりだ。
 種村季弘の対談集『東京迷宮考』*1を読む。「ラビリンスとしての古本屋」というタイトルで池内紀堀切直人との鼎談。古本談議が面白い。

池内 たしかに、だんだん楽しみが少なくなったのは、そのあたりですね。つまり、どうしても欲しい本があって探しているということは、あまりそうないんですよ、はっきりいえば。むしろ古本屋に行くのは、読むか読まないかわからないんだけれども、多分読まないかもしれないし、しかし見つけたら欲しいという、そこが楽しいんですね。読まない本を買うのが本当の読書家です(笑)。それに定価とのゲームがあってね。  231頁