乗り遅れた兵隊

ナツメと蜂

 街路樹にナツメの木が植えられている。通りがけに寄ってみた。小さな黄緑色の花へ、小さな蜂が花を目がけて飛び回っていた。ナツメの葉はつやつやしている。ふーむ。こんなに小さな六ミリほどの花にも、蜜を求めて探し回る昆虫の世界というのは、なんだか不思議なものだ。
 『蕪村句集』に、

 虫のために害(そこな)はれ落(お)ッ柿の花

 先日、NHKラジオの「ときめきインタビュー」で、「硫黄島に眠る兵士に教えられたこと」で、ノンフィクション作家の梯久美子さんの話を聴いた。梯さんは、ご自分のお父様が特攻隊の飛行機乗りになりたがっていたことを、若いころは、どうしても理解することができなかった。ところが、『散るぞ悲しき』*1という本の取材で、この栗林中将の生き方を探っていくなかで、お父様の気持ちを理解できるようになったとも。
 『日米交換船』*2(新潮社)で、鶴見俊輔氏らの回想が本になっている。鶴見さんらがアメリカから捕虜交換で本国へ送られる途中、シンガポールに寄航した際に交換船の龍田丸や鎌倉丸などに臨検で乗船した人の話を書いたことがあるが、その人の後日談に「硫黄島」についての話もある。
 それは、シンガポールから昭和十七年の暮に内地へ輸送船で戻ったあと、一旦除隊されていたところ、半年くらいで再び召集されて兵隊になった。昭和十八年(1943年)の12月に、神経痛とかで病気になり入院生活をすることになって、陸軍病院を退院したのが翌年の3月だった。ところが、退院した日の一週間前に、自分の所属する部隊が輸送船で硫黄島へ向かって出発していたのだった。所属していた部隊が硫黄島へ輸送船で運ばれて行ってしまい、乗り遅れるということになる。所属部隊がなくなったので、相談すると福岡の西部軍司令部に人員が要るとのことで、福岡へ転属したという話だった。
 今週、ブックオフで買った本。各105円。
 江國滋『俳句旅行のすすめ』1999年(朝日文庫)。*3
 会田雄次『アーロン収容所』1995年23版(中公文庫)。*4
 日下公人『本からの発想』1994年(文藝春秋)。
 荒川じんぺい『パソコンが僕の生き方を変えた』2001年(岩波書店)。