ギョッとする江戸の絵画〜伊藤若冲

 NHK「知るを楽しむ この人この世界」辻惟雄さんで、「ギョッとする江戸の絵画」の第五回《絵にしか描けない美しさ〜伊藤若冲》を観た。先週、うっかり見逃していたので、再放送で早朝に辻惟雄(つじのぶお)さんの名調子を聴く。
 冒頭、アメリカのロサンゼルスの近郊コローナ デル マールのコレクターのジョー・プライスさんが、若冲の絵が壁に描かれた風呂に入っている場面から始まる。
 現在七十七歳のジョー・プライスさんは二十四歳の時にニューヨークで若冲に出会った。その当時、日本人は伊藤若冲に無関心だったので海外に買われていった。その頃のことを、辻さんは「日本人は若冲に無関心だったので、こりゃなんとかしなきゃいけない」と思ったそうだ。
 若冲の「動植綵絵」(どうしょくさいえ)三十幅は、四十五歳から五十五歳までかかって描かれた。その絵をめぐって、若冲は「どんな生き物にも、暖かい目をそそいでいた。」とか、自然の「千変万化に夢中になっている。」と話されていた。
 細部を見ていくと、蛸の足に小さな蛸の子供が抱きついている。絵に、お色気がある。また、イタリアのベネチアで見たドレスに、若冲の孔雀の絵がデザインされていたのを見て、若冲のデザインの国際性に思いをいたす場面もあった。
 他に、「群鶏図」のその絵の描写を「絵にしか描けない美しさ」とか、クリスタルな輝きで「今風に言えば、バーチャル・リアリティを表現しようとしたんじゃないかな。」とも。
 最後に、ジョー・プライスさんが、若冲という人に、次のような言葉を語って番組は終わった。若冲は《生物に誇りと命を与えました。》
 次回(今夜)は、第六回:「猛獣戯画〜長沢蘆雪」である。
 参照:「ギョッとする江戸の絵画」
 『本の窓』2006年8月号に、「戦後史を物語る、幸せな日本美術コレクション」と題して、『ザ・プライスコレクション』*1刊行に寄せてという山下裕二さんへのインタビューがあり、収集家プライスさんは、ローソクの明かりで絵を見るというような江戸時代の明かりで鑑賞するような人なのだが、その人となりが語られていて興味深かった。
 
 

*1:ザ・プライス・コレクション