映画『北斎漫画』

 12日、「新藤兼人 百年の軌跡」の5月上映の一本で、映画『北斎漫画』(1981年、松竹、119分、カラー)を観た。
 出演は、緒形拳西田敏行、田中裕子、樋口可南子フランキー堺乙羽信子宍戸錠大村崑殿山泰司愛川欽也
 撮影が丸山恵司、音楽は林光である。題字は中川一政

 5月プログラムより引用。 

矢代静一の同名戯曲の映画化。創作意欲のおもむくままに奔放に生きた浮世絵師・葛飾北斎。彼の生涯を、堅実に戯作者への道を歩む友人の滝沢馬琴と対比させながら、北斎の娘お栄、馬琴の女房お百、魔性の女お直の3人の女性をからませて描く。

 冒頭、雨の中を男が江戸の町を走って行く。この映画の主人公北斎で、名前は鉄蔵という。
 北斎緒形拳北斎の娘のお栄を田中裕子、曲亭馬琴滝沢馬琴)を西田敏行が演じる。
 馬琴の家に、北斎親子が居候している。出戻り娘お栄は父親の画業を手助けしている。
 馬琴の女房お百(乙羽信子)、北斎の絵のモデルになるのがお直(樋口可南子)である。
 馬琴は女房のお百に頭のあがらない恐妻家で、黄表紙本を書いている。 
 北斎(鉄蔵)のその奔放な絵の修業時代から最晩年までの画業のエピソードをはさみながら、娘お栄、黄表紙本の作者の馬琴との友情、北斎の養父(フランキー堺)と魔性の女お直(樋口可南子)をめぐる養父の悲劇、晩年の馬琴とお栄の悲恋なども明らかになる。
 お栄役の田中裕子のこだわりのないあっけらかんとした演技が印象的だ。
 大蛸が女に絡む北斎の絵があるが、映像でその絵を再現したシーンが迫真的だった。
 驚愕の映像である。
 富嶽三十六景の絵の構図を求め富士山の見える土地へ旅に出る北斎
 修業時代のまだ鉄蔵といっていた頃から最晩年の北斎親子と馬琴の最後までを描いている。
 銭湯で、十返舎一九宍戸錠)、式亭三馬大村崑)、歌麿愛川欽也)、それに北斎が一堂に会して入浴している場面は面白い。
 殿山泰司は版木の彫師で出演。