深町眞理子の「昔むかし読んだ物語」のこと

シダレヤナギ

 快晴で風が強い。通りにある桜はソメイヨシノが多い。八重桜はまだ咲いていないが、ソメイヨシノは週末から来週にかけてが見頃かな。
 シダレヤナギの若葉はぐんぐん伸びている。枝に若葉色が増して目に鮮やかだ。強く吹く風に枝がゆれている。
 ミネルヴァ書房の『ミネルヴァ通信』三月号の「書物逍遥」で、「昔むかし読んだ物語」と題した翻訳家・深町眞理子の文を読む。目下、光文社古典新訳文庫の一環として、ジャック・ロンドンの『荒野の呼び声』と、それと対をなす『ホワイト・ファング』の翻訳を進めているそうだ。
 このあと、アンナ・シューエル『黒馬物語』や、バロネス・オルツィの『紅はこべ』も予定に入っていると言う。ふーむ。光文社古典新訳文庫に、深町さんの新訳が出たら読んでみたいね。
 まだ占領下だった頃、一九五一年、深町さんが就職したアメリカ人経営の本屋の事務所には、戦前戦後の海外本の邦訳書が山と積んであった。

そのなかにロンドンの二書があり、借りて読んで、おおいに堪能した。ほかにも同類の本をたくさん読んだのに、(たとえばウイリアム・サロイヤン『わが名はアラム』とか)、半世紀以上を経て、そのときの興奮がいまも胸に刻まれているのは、ロンドンのこの二冊だけだ。