鷲田清一の『京都の平熱』とシオカラトンボ

シオカラトンボ

 先日の池でトンボを見かけた。シオカラトンボのようだ。睡蓮の葉がつやつやと水面に広がっている池にいた。そばで、じっくり眺めると、トンボは翅(はね)を前に寄せてとまっているのだった。

トンボ科の昆虫。中形で最も普通のトンボ。四〜九月に現れ、成熟した雄は腹に青白粉を装う。雌は淡黄褐色でムギワラトンボという。  『大辞泉

 最も普通のトンボ。シオカラトンボ。そのシオカラトンボのような(?)京都案内書を読む。
 鷲田清一の『京都の平熱』(講談社)。
 京都市バス206番系統の路線図は、京都駅から市内を一周して京都駅まで戻って来る。
 「その路線沿いにわたしの人生のすべてがあった。京都の聖・俗・学、つまり寺社仏閣も旧遊郭も大学もほぼ揃っている。そんなバスである。」と冒頭にあるように、この路線沿いに生まれ、育ったのも、育てたのもここと言う鷲田清一さんの京都案内である。奇人のいる街は住みやすい。それは、逆に言うと、しがらみがきつすぎて、緻密すぎて、住みやすくはなく、すぐに引っ越ししたくなるのだが・・・とある。
 この本は、どこから読んでも面白い。
 路線バスから、ひょいっと降りて筆者と共に京都の「平熱」を歩いているような気持ちがする。
 写真は鈴木理策氏。
京都の平熱  哲学者の都市案内