ラジオ深夜便で「読書で豊かに」を聴く

昨夜からの小雨が午前中にあがる。午後も薄曇であったが、夕方の東北東の空に朧月が昇っていた。鏡のような川面に月が映っている。午後八時前に朧月が南東に眺められた。24日は満月である。
 NHKの「ラジオ深夜便」で、ないとガイド「読書で豊かに」を聴いた。明石勇アナウンサーの担当日である。先月は青山南さんが、四冊の本を紹介していたが、今夜のゲストである小池昌代さんは三冊紹介している。
 一冊目は、中野京子『怖い絵』(朝日出版社)。16世紀から20世紀にかけての西洋の絵に恐怖を読み取っていく本ですね。
 二冊目は、沢木耕太郎『無名』(幻冬舎文庫)。沢木さんが父親を在宅看護で看取った記録ですね。父親と息子の距離感、この親子の距離感にベタベタしたものはなかったが、看病しながら思い出していくエピソードがいいですね。などと語るお二人の話を聴く。明治四十二年生まれの「このお父さんは、たいへんな読書家で、本を読む人っていいなあと思いましてね。」と、小池さん。
 「過剰なものを良しとしない、制御が働いている。名誉だとか、お金だとかといった世界に生きているのではなく、・・・俳句を残しているんですが、この俳句がまた、いいんですよね。」
 「この本を読むひとは、いろんなところに感情移入して読んでいけるんでしょうね。」
 三冊目は、佐伯一麦『ノルゲ』(講談社)。ノルゲとは、ノルウェー語でノルウェーのこと。そこで過した一年のことが淡々とつづられている。妻の留学にお供してノルウェーへ住みに行く。言葉も地理も分らないところから始るんですよね。
 人間が一から生活を始める。ひとつひとつ積み重ねていく。本当にリアルに書かれている。ノルウェー語をまるで赤ん坊から自分が始める、そういう状態が・・・。
 ひようひようとした書き方。書き手が余分な感情移入しない。ただ見た、聞いた、食べた、こういうことを経験した。
 この人はこう思ったんではないか、といった余分なもののない描写が・・・。
 奥さんの描写も特別の存在に書かれているんではなく、樹木、鳥とか生きものと同じに淡々と書かれている。