昨夜からの細い春雨で、日が暮れる。街路樹のシダレヤナギに若葉が垂れ下がっていた。
蕪村の句に、「春雨に下駄買泊瀬(かふはせ)の法師かな」。
池澤夏樹の『異国の客』(集英社)から、須賀敦子をめぐって書かれている「高校生、法王の死、シャルトルと須賀敦子」を読む。冒頭に、
《美しい春が来た。
シルエットばかりだった木の枝に芽が吹いて、若い緑が日に日に濃くなってゆく。》
親しかった友人の中で最も尊敬するキリスト教徒、それも堅固なカトリックの信徒が須賀敦子だった。一時期ぼくは彼女を中心とする交友の輪の中にいて、彼女と心おきなく喋る仲だったけれど、信仰について話すことはなかった。 169ページ
と、池澤さんの回想がある。『コルシア書店の仲間たち』に描かれた須賀敦子の回想や彼女がフランス留学中の一九五四年六月に、一種の巡礼としてランブイエから徒歩でシャルトルへ行き、大聖堂を見たときの回想にふれている。
これには、『ヴェネツィアの宿』からの引用文あり。