『クレーヴの奥方』

クレーヴの奥方

 「ポルトガルの巨匠 マノエル・ド・オリヴェイラ監督特集」が7月15日から映像文化ライブラリーで開催されている。6本が上映される。
 初日、『クレーヴの奥方』(1999年、ポルトガル=フランス=スペイン、107分、カラー)を観た。観客は20人ほど。原題はLA LETTRE。
 松尾芭蕉とほぼ同時代を生きた300年前のラファイエット夫人のフランス心理小説『クレーヴの奥方』を、現代のフランスのパリを舞台にして脚色している。
 医師のクレーヴ氏に見初められ結婚しているカトリーヌ(キアラ・マストロヤンニ)は、尊敬はしているが、夫には愛情を感じられない。
 ある音楽会で知り合ったロック・ミュージシャンのペドロ・アプルニョーザ(実名で出演)の魅力に惹かれる。懸命に貞淑を貫こうとするカトリーヌと、これまた一途な思いを寄せるロック歌手のペドロ・アプルニョーザが滑稽なまでに純情な男を演じている。夫は妻の思いに対しての心労が重なって哀れにも亡くなってしまう。
 二人は寄り添うこともなく、カトリーヌは修道女の幼友達がいて、心の葛藤を相談しに修道院へ会いに出かけ打ち明ける。
 何度も相談しに出かける。だが、カトリーヌはパリから何時しか行方不明になる。
 後に、アフリカの地からの手紙を幼友達の修道女は受け取り消息を知るのだった。パリの家と田舎の別荘を残して身一つで難民救済活動に明け暮れる日々を手紙に書き綴っているのだった。
オリヴェイラ監督は昨年100歳を迎えた現役の映画監督である。
90歳近い頃に監督した、この映画の深みに驚く。