九月七日は二十四節気のひとつ白露だった。この頃から秋の気配が感じられはじめる。
夜になると虫の鳴き声が遠く近くと聞こえて来る。秋の夜長。
街路樹にムクゲが植えられていて花が咲いている。
蕪村の句に、「修理寮(しゆりれう)の雨にくれゆく木槿(むくげ)哉」。
安永五年七月二〇日の句である。*1
アオイ科の落葉低木。高さ約三メートル。葉はほぼ卵形で、縁に粗いぎざぎざがある。夏から秋にかけて、紅紫色の五弁花が朝開き、夕方にしぼみ、次々と咲き続ける。中国・インドの原産。庭木などにし、花が白色や八重咲きなどの品種もある。はちす。きはちす。ゆうかげぐさ。あさがお。もくげ。 『大辞泉』
『図書』2009年9月号を老舗書店に寄った時に頂いていた。
『図書』に連載の今福龍太さんの「薄墨色の文法」12――「螺旋」四、が興味深い。
「頭頂の翳(かざ)しの花」というタイトルで、頭の頂にある旋毛(つむじ)を「父や母の手がそっと幼い自分の頭に触れ、旋毛(つむじ)のめぐりをやさしく撫でまわしていた感触をわたしたちは覚えているだろうか?」 という問いかけで始まる文である。
《奄美群島における「渦」をめぐる日常語彙の収集に我を忘れるほど熱中することになった。》
その収集からみえてくる今福龍太さんの推察が面白い。
*1:修理寮――宮中の修理営繕にあたる役所。