猫と流星

星座の話

 オリオン座流星群を見るべく午前3時から観望した。
 街灯の光を避けるために小高い山の公園の頂上へ上がった。
 3時20分に、オリオン座から西の方へ流星が流れて光って消えた。
 目を地面へ向けると、左手の暗闇からなにやら白い小さなものが動いて近づいて来る。はてな
 音も無く近づいて来るのはなんだろう。
 白いものが闇からぼーっと現れた。猫だった。
 ひたひたと音もなく、人を恐れるでもなく、わたしの足元に擦り寄って来た。猫の出現に少し驚き、ほっと安心する。
 猫は深夜の闇の中で、静かに前足を伸ばして屈伸運動をはじめた。屈託なく、天体ショーなど見向きもしないで・・・。
 3時25分、オリオン座の左上のベテルギウスのあたりから、やや右下がりに西方へ星が流れた。
 二つ目の流星だ。
 白い猫がまた人懐(なつ)こく擦り寄って来る。ひょいと猫から離れて観望を続けた。
 天文手帳を見ると、この流星の母天体はハレー彗星である。2009年の月齢の巡り合せがいい好条件の流星群のひとつだ、とある。
 二つ目の流星を見たあと帰りはじめると、猫が後からついて来るのだったが、途中で見えなくなった。
 下山してから3時30分にもオリオン座からの流星が流れた。計3個を観れた。

 夕方、ブックオフ野尻抱影の『星座の話』(偕成社)を見つけた。買う。
 他に、 江國滋著『鬼たちの勲章』(1983年初版、旺文社文庫)。
 堀江敏幸著『雪沼とその周辺』(新潮文庫)。

 『星座の話』改訂にあたって、という文を野尻抱影の女婿(じょせい)の堀内彦男氏が書いている。

 作家である大佛次郎は、兄・野尻抱影のことを「星の抱影」といっていたが、まさに抱影の生涯は星とともにあり、本業であった英文学も星光の中にとけこんだ形であった。
「私は浜っ子(横浜生まれ)なもので好奇心が強くて・・・・・・」と、抱影は晩年よく口にしていたが、やり始めたことを中途半端でほうりだすことができない性格は、兄弟ともに共通していて、大佛の場合にはそれが、『天皇の世紀』などの大佛文学の中に花開いていると思える。(中略)
 一九五四年に偕成社から出版されたこの本が、一九七七年に改訂されて、青空を思わせるカバーつきでとどけられたとき、抱影は病床の中で、まずその出来ばえをよろこんだ。
 これが最期となろうとは誰も思っていなかったし、それを機会に今までどおりの著作活動を期待していた。しかし、抱影はその年の秋、自ら望んでいたオリオン座が南中する時刻に、星の世界へ旅立っていった。  312〜313ページ
 

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