映画『江戸の悪太郎』

江戸の悪太郎

 立春が過ぎてから寒の戻りで連日底冷えがする。
 晴天でも時折、空から白いものが降っていた。
 午後九時ごろ、オリオン座が南中し、東の空に高く火星が眺められた。冬の星座が華やいで、冬のダイヤモンドとよばれる六つの星がよく見えた。
 昨日につづいてマキノ雅弘監督の映画『江戸の悪太郎』(1939年、日活、84分、白黒)を観た。
 夜の部だが、観客が多い。
 主演は嵐寛寿郎轟夕起子である。脇役に志村喬が占い師で。
 嵐寛寿郎は長屋で寺小屋を開いている浪人で、長屋の住人から先生と呼ばれている。
 轟夕起子は親の勧める結婚を結婚式の最中に嫌って逃げ出し姿を消す豪商の娘で、少年に姿を変えている。お腹が腹ペコになったためにひょんなことから娘は寺小屋に転がり込み、寺小屋を手伝うようになる。
 その寺小屋のある長屋の土地を、旗本とそのお抱えの悪徳な祈祷師一味が大家から買い上げて住民を立ち退かせようとするのだが、その陰謀に立ち向かう先生の嵐寛寿郎、占い師の志村喬、芝居小屋の舞台で美声で歌う轟夕起子の活躍が痛快であった。
 轟の「お父様のバカ」という習字の茶目っ気ぶりに笑う。