吉村公三郎監督の映画『森の石松』


 今月(5月)も「時代劇特集」がつづく。

 吉村公三郎監督の映画『森の石松』(1949年、松竹・京都、97分、白黒)を鑑賞。
 出演は、藤田進、轟夕起子志村喬、朝霧鏡子、飯田蝶子笠智衆沢村貞子、三井弘次、河村黎吉、殿山泰司

 脚本=新藤兼人、監督=吉村公三郎のコンビによる異色の時代劇。侠客になろうと心に決めた森の石松は、清水の次郎長の子分になって名を上げる。次郎長親分の代参で金比羅参りをした石松だったが、博打がもとで窮地に陥る・・・。

 昭和二十四年の松竹映画。美術・水谷浩、撮影・生方敏夫。

 冒頭、富士山を背景に一面に広がる茶畑で茶摘みの女たち、ふんどし一丁で男たちは採った茶葉を蒸して揉み、乾かす作業をする。
 農民の石松(藤田進)は年貢の代わりに地主に製茶の労働奉仕を毎年している。
 年季が明けて、わずかばかりの賃金を手にしたのだったが、同僚の吾作(殿山泰司)と家に帰る途中、鳥千鳥八兵衛(志村喬)の賭場で賭け事をしてすってんてんになるのだった。
 鳥千鳥八兵衛の情婦がお新(朝霧鏡子)。お新が石松を侠客へと引き寄せることになる。
 しかし、賭場で一攫千金の味を知った石松は、侠客にあこがれ、母親(飯田蝶子)や吾作の反対を押し切って、清水次郎長の子分になるのだった・・・。
 金比羅参りの三十石船の江戸っ子を河村黎吉、港屋という女郎屋の主人を、笠智衆が飄々と演じる。その妻が沢村貞子である。
 港屋の女郎のお藤が轟夕起子で、石松が任侠から足を洗うのを願っていたが、賭場での博打に勝ったのが逆恨みを買い闇討ちにあって、石松は奮闘むなしく非業の最期を遂げるのだった。
 最後は、三井弘次のノミコミの忠太という石松の子分が兄貴の敵討ちだと言って町を駆けて行く。
 港屋の主人は元熊本藩の武士で、熊本弁なまりで飄々とした役柄を笠智衆が好演している。