今月の映像文化ライブラリーは「京マチ子特集」である。
7日、吉村公三郎監督『偽れる盛装』(1951年、大映、102分、白黒)を見に寄った。
脚本が新藤兼人。戦災に遭わないで街が残った京都の祇園を舞台に、京マチ子の演じる芸者・君蝶と京都市の観光課に勤める妹・妙子(藤田泰子)の二人の生き方を因習の中に描く。
妙子の恋人孝次を小林桂樹が演じている。
京都の祇園で、したたかに男から男へと手玉に取って生きる君蝶であるが、金を貢いだ男が会社の金を使い込んで首になり、男からの金の無心を断り恨みをかい、追いかけられ、踏み切りの遮断機の前で背中を刺されてしまう。
その一方、君蝶が病院に入院している時に、妹の妙子は恋人と共に東京へ旅立つ。
京都から東京への妙子の旅立ちに小さな希望の光がほのかに見えてくるようなラスト。
京マチ子がしたたかさとその裏に見える哀歓を見事に演じている。
14日、溝口健二監督『雨月物語』(1953年、大映、97分、白黒)を夜の部で観た。
上田秋成の『雨月物語』の原作のうち、「蛇性の淫」「浅茅ケ宿」の二篇を脚色。霧の湖を焼物の器を乗せて小舟で大津へ向かうシーンの幽玄な映像美は覚えていた。
怪異なおどろおどろしいシーンには身震いする。
移動しながら長く回す撮影は、なんとなく映画『新・平家物語』を連想した。
そういえば、『新・平家物語』も撮影は宮川一夫であった。