ヤナギと「京マチ子特集」

ウンリュウヤナギ

 21日は二十四節気のひとつ小満。草木が茂って天地に満ちる頃。
 街路樹のヤナギの細い枝がくねくねとして、葉は波打ったように曲がっている。
 高さが十メートル以上もあり高木で、ウンリュウヤナギというプレートが幹にくくりつけてあった。面白い枝ぶりと葉の姿である。
 今月は映像文化ライブラリーで、レビュー・ダンサーから女優に転じた京マチ子の演技を作品によって振り返る「京マチ子特集」を上映している。
 15日、衣笠貞之助監督の映画『地獄門』(1953年、大映、88分、カラー)を観た。
 冒頭のクレジットに助監督に三隅研次イーストマン・カラー。
 平清盛に仕える盛遠(もりとう)(長谷川一夫)が、都で反清盛派が反乱を起こした騒動の渦中に袈裟(けさ)(京マチ子)という女と知り合い懸想する。袈裟が夫の渡辺渡(わたる)(山形勲)の妻であることで拒むのだが、執拗に盛遠は袈裟に迫る。盛遠は渡(わたる)を殺してでも袈裟の承認を望むと強く迫るのだった。
 思い悩んだ袈裟が取った最後の決断は? あっと驚く結末。
 カラー映像の衣装や舞台が深みのある色で美しい。原作は菊池寛の「袈裟の良人」。
 宮島の厳島神社平清盛が家来と高舞台の舞楽を見物しているところあり。 
 
 21日、溝口健二監督『赤線地帯』(1956年、大映、85分、白黒)を見に寄る。
 出演は京マチ子若尾文子木暮実千代三益愛子沢村貞子などの女優の演技が秀逸。脇役に進藤英太郎、十朱久雄、加東大介多々良純などの男優。撮影は宮川一夫
 京マチ子は父親への反発から神戸から家出して来たよく動き、よく食べる娘を、若尾文子は疑獄事件で父が捕まり借金のためにクールでしたたかに生きるが、貢いでいた男から恨まれて殺されかかる女を、木暮実千代は子連れで失業中で病気の夫を持つ身、そんな妻の苦労も妻に相談もせずに危うく自殺を図られる女を、三益愛子は故郷に息子を残して借金を返すために東京で働いているが、その息子が上京して働いているので喜んで会うのだが、息子から家族の絆を切られる仕打ちに狂ったようになる母親を好演。
 館外に出ると晴れた南の夜空に上弦の月が高く眺められ、西の空にひときわ明るく金星が輝いていた。