暁や厨子を飛び出るきりぎりす

 早朝、ポリバケツの水に、浮いているバッタを見つけた。
 はてな、どこからやって来たのだろう。
 指先でつまんで、ピーマンの葉の上に移動させた。
 バッタはおとなしく葉っぱの上にじっとしている。色は緑色ではなく土色をしている。まるで地面の色に似て、保護色である。
 葉にとまっているバッタをもう一度つまんでみた。人ざし指と親指の間でもがいていたが、するりと後脚で蹴って逃げ去った。あたりを探したが、保護色にまぎれて見つからなかった。
 バッタの名前は何だろうか。調べてみた。イボバッタか? 同定は微妙である。

 子規の句に、「暁や厨子(ずし)を飛び出るきりぎりす」。明治二十六年の句。