「on reading 本を開けば」から

 「ポルトガル映画祭2010」に連日通っている。マノエル・ド・オリヴェイラ監督の映画。
 26日、『過去と現在 昔の恋、今の恋』に続いて、以下の2本を観る。観客はいずれも30人ほど。
 
 27日、『神曲』(1991年、142分、カラー)
 28日、『アニキ・ボボ』(1942年、71分、白黒)

 街路樹の紅葉が青空に映えて見頃だ。まだ散り始めてはいない。ポプラやトウカエデ、ソメイヨシノなど落葉が進んでいる。


 今朝の朝日新聞の「on reading 本を開けば」で、中野翠さんの「文庫を手に目的のある散歩」が、月島で引っ越しの物件を見に出かけた散歩で、小津安二郎監督の映画『風の中の牝雞(めんどり)』の一場面になっている場所ではないか? と、隅田川べりの小公園を見つけたというエピソードから、中野さんの祖父の勤め先や父の生地である月島をめぐる文章が読ませる。
 昨年の11月、12月に、「生誕100年 田中絹代上原謙特集」があり、その時の1本に『風の中の牝雞(めんどり)』(1948年、松竹、83分、白黒)があった。
 余談ですが、この映画にはラストに一匹の犬がすたすたと歩いてやって来るシーンがある。
 余白のシーンといえばいいのか。しかし、この犬の登場で映画が妙に生き生きとして来るのだ。
 アキ・カウリスマキ監督の映画『街のあかり』にも、ラストに犬がすたすたとやって来るシーンがあって、似ているなぁ、と思ったものだ。
 それと、夫の佐野周二が妻の田中絹代を階段から突き落とし、転がり落ちる田中絹代の演技が凄い。必見!
 《小津映画の中では異色のシリアス作品で、妻(田中絹代)の不貞を疑う夫(佐野周二)が月島の小学校のすぐ近くにある怪しげな家を訪ね、そこで働いている貧しく若い女から妻の過去を聞きただそうとする。憤懣を抱えながら外に出て、隅田川べりの草むらに座っていると、先ほどの娘がやって来て、「ここでお弁当食べるの」と手づくりのふかしパンを食べ始め、「お兄さんも一つどう?」と分けてくれる場面――。
 あの場面でも勝鬨(かちどき)橋は右手に同じような角度で映っていた。草むらは整備され、ビル群が並んでいても、大きな空と隅田川は変わらない。敗戦から間もない頃の月島風景をぼんやりと夢想する。》(中略)
 《人生も後半のせいか、祖父や父の過去をたどりたい、体感したい、という気持ちが強くなってきたようだ。今はこの地から離れがたくなっている。》