山本嘉次郎監督『馬』のこと

 堀川弘通著『評伝 黒澤明』(ちくま文庫)を読む。
 山本嘉次郎監督『馬』(1941年、東宝映画、映画科学研究所、127分、白黒)について、堀川弘通氏の記述がある。
 一九四〇年入社したホヤホヤの演出助手だった年に、衣笠貞之助監督『続 蛇姫様』と中川信夫監督『エノケンの誉れの土俵入り』と島津保次郎監督『二人の世界』と三本の作品をサード助監督として務め、山本嘉次郎監督『馬』に途中からつくことになった。
 

『馬』は岩手県の農民一家が子馬から軍馬を育て上げるまでの話で、春夏秋冬、一年がかりの撮影である。私は途中、秋の部分から山本嘉次郎組につくことになり、チーフ助監督(当時は製作主任と言った)が黒澤明、セカンドが藤原杉雄、サードが私である。  51ページ

 
 

『馬』の秋の場面は、盛岡近郊で行われる馬市のシーンが中心で、他はデコちゃん(高峰秀子)が弟の就職を馬で送る移動撮影を「古間木」近辺で行った。この移動撮影のロケハンで私はクロさんに同行した。  51ページ


 この映画『馬』に、弟が列車で故郷を離れるのを、姉の高峰秀子が愛馬で列車を追って行く長い移動撮影が、まるで西部劇で馬が駆ける一シーンのようだった。

 

キャメラは季節ごとに、違うキャメラマンが担当し、冬は伊藤武雄、春は唐沢弘光、夏は鈴木博、秋とセット撮影は三村明が当たった。  52ページ


 この移動撮影は三村明が担当していたのですね。
 参照:映画『馬』http://d.hatena.ne.jp/kurisu2/20111105

 ちくま文庫版の解説は川本三郎氏。

評伝 黒澤明 (ちくま文庫)

評伝 黒澤明 (ちくま文庫)