「植草甚一スクラップブック17 アメリカ小説を読んでみよう」に所収の「3 アメリカ文学のたのしみ」にある座談会ですが、佐伯彰一・丸谷才一・植草甚一の三人が出席しています。鼎談(ていだん)ですね。
「現代アメリカ文学の冒険」というタイトルで三人がおしゃべりをしているのですが、そのさわりを一部引用してみましょう。
佐伯 植草さんは、アメリカ小説については日本じゃ先駆的な読者で、昔からアメリカ小説がごひいきでしょう。
植草 じつは戦争当時ですが、わりあい読んでいたのがイギリス小説でした。けれどイギリス小説ばかり読んでいると、飽きちゃってね、それでアメリカ小説に手を出すのですが、ちょうどジョン・オハラが売り出したころで、たとえばオハラを読むと、アメリカ作家の文章がイギリス作家とは、まるで違った感じがするので、それでオヤと思ってアメリカ小説を続けて読みました。けれどまた飽きちゃうんです。それでイギリス小説に戻ったり、スペインとかアルゼンチンとかいった小国のものですが、そういったのはフランス訳がわりにやさしいんですね。そしてイギリスやアメリカよりずっと強烈な感じをうけました。といって手に入る数がすくないので、またもとへ戻っていくという読みかたでした。
丸谷 植草さんぐらい読めば、飽きるでしょう。(笑)
佐伯 植草さんはたいへんな美食家でいらっしゃるわけだけれど、イギリス小説に飽きてアメリカ小説を読むというとき、その味わいがどう違って感じられるか・・・・・・。
植草 ただ好奇心から読んでいるだけですが、イギリスの小説だと、かなり長いものが多く、途中で頭がボンヤリしてしまうのですが、そこを過ぎたあたりから、いいなと思うことがよくあった。

- 作者: 植草甚一
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