雑誌『時代映画』7月号(1956年)昭和三十一年刊に、「思うこと」と題して、市川右太衛門が書いています。(名前が市川右太ヱ門と表記されている。)
松田定次監督の映画『旗本退屈男 謎の幽霊船』(1956年)が撮影された時期の映画界の雰囲気が伝わって来ます。
この前の「父子鷹」では、私の次男北大路欣也がデビューさせて頂きました。
フッと回顧してみると私の芸道への歩みも長いものです。
何時の間にやら、子供たちが同じ道に身を投じるようになつたのですから感慨もまた深いものがあります。
それにいま撮つている「謎の幽霊船」で、旗本退屈男ものも二〇本になります。
記念作品として天然色でやつていますが、同じシリーズを二〇本も撮つてきたこのこともまた私の胸にはよくぞ「時代映画」の中に生き抜いてきた感慨を新たにし、まだこれからだと自から励ましてもいるのです。
「時代映画」も、創刊一周年を迎えました。一年仔の域を脱して、時代劇の良き指導誌としての発展を祈つてやみません。
市川右太ヱ門
『時代映画』7月号で創刊一周年を迎えたようです。
旗本退屈男ものも二〇本になりますとあり、白黒映画の旗本退屈男からカラー映画の旗本退屈男になる旨も語られています。
雑誌『時代映画』の広告より。