小津安二郎監督の『和製喧嘩友達』

 「小津安二郎監督特集」から、昭和4年と昭和5年の映画三本が上映される。
 映画『和製喧嘩友達』(1929年、松竹蒲田、14分、白黒、無声[デジタル復元版])
 出演、渡辺篤、浪花友子、吉谷久雄、結城一郎。撮影・茂原英雄。

若い二人のトラック運転手が、身寄りのない娘を引き取るが、二人ともその娘に惚れてしまう。はたして娘の意中の男性は・・・。

 映画『大学は出たけれど』(1929年、松竹蒲田、12分、白黒、無声、部分)
 出演、高田稔、田中絹代、鈴木歌子、日守新一

 大学を卒業したものの職のない野本。妻は家計を助けようとバーで働くが、野本の焦りはつのるばかり・・・。

 映画『落第はしたけれど』(1930年、松竹蒲田、64分、白黒、無声、不完全)
 出演、斎藤達雄田中絹代、二葉かほる、青木富夫。 

カンニングで試験を乗り切ろうとした高橋だったが、下宿の中で彼だけが落第してしまう。しかし、卒業した連中にも職がない。かえって高橋の方が溌剌と再度の学生生活を送るのだった。


 小津安二郎監督の『和製喧嘩友達』(1929年)は、二人のトラック運転手、留吉(渡辺篤)と芳造(吉谷久雄)のコンビがトラックを街中で運転中に、行き倒れた娘のお美津(浪花友子)を見つけた。
 行く当てのない娘を、二人は自分たちが二人で住んでいる長屋へ引き取って一緒に暮らし始めた。
 お美津をめぐる留吉と芳造の二人の恋の鞘当てがコミカルに展開される。
 朝食で目玉焼きを作って食べるシーンがあるのだが、滑稽な場面がある。そのしぐさが笑える。
 渡辺篤と吉谷久雄がお美津をめぐって殴り合いの喧嘩(けんか)をするシーンで、止めに入った連中がワイワイと集まって止めようとする。だが、いつまでたっても二人は止めようとしない。呆れてみんな去って行った。残った二人がまだまだ続けて殴り合いをしている。
 疲れきってとうとう喧嘩を止めた。そうして、喧嘩もするが、二人は仲が良い。
 だが、娘は意中の男性(結城一郎)と共に汽車で去って行く。
 ラスト、それを二人のコンビがトラックで、娘の前途を祝ってトラックでいつまでも汽車を追い駆けて行く躍動感のある移動撮影が素晴らしい。