どくだみと川端茅舎

 晴れる。最高気温29℃、最低気温21℃。
 ドクダミの花が咲く季節になった、

 テレビの天気予報で、女性の気象予報士が季節の植物をめぐって、ニュースキャスターの男女二人に尋ねていた。
 「ドクダミの花はどの部分でしょうか?」
 一人は、「白いところでしょうか」と答える。
 「ほう」と、気象予報士が相槌をうつ。

 もう一人も「白い十字になっている部分でしょうか」と返事をする。
 「ほう」と気象予報士が強く相槌をうつ。
 「えー、白い十字に見える花びらのような部分ですが、実は苞(ほう)といいまして、中央のとがったつぶつぶの黄色い部分を花穂といいます」
 気象予報士さんは、「ほう」とヒントを言ったのだが、二人に伝わらず苦笑いだった。
 

ドクダミ科の多年草。日陰の湿地に生え、高さ一五〜三五センチ。全体に悪臭がある。葉は広卵形。夏、淡黄色の小花を穂状につけ、その基部に白い苞(ほう)が十字形につき、花びらのように見える。整腸・解毒・利尿などの民間薬として用いる。十薬(じゅうやく)。  『大辞泉

 大辞泉に引用されているのが、川端茅舎(かわばたぼうしゃ)の俳句であった。

 「どくだみや真昼の闇に白十字

 昭和十六年(1941年)の七月十七日に川端茅舎が逝く。
 中村草田男の句集「来し方行方」に、茅舎追悼の句が収録されている。
  
 花に露十字架に露煌と掛かり

 正午の露消え行進曲鳴り響き

 審判の剣に置く露消えしがごと

 露消えし鏡に時世(ときよ)ありありと 

 露に歎く童男童女の声に帰り


 この追悼句につづくのが次の句である。

   同十九日、其告別式

 梅雨も人も葬りの寺もたゞよすが

   旬日後、彼を偲び、己が藝の為すなきを歎きつゝ近郊を歩む。


 炎天の手の小竹(ささ)凋(しほ)る葉を巻きて

 青稲の碧羅の空も茅舎以後

 伏目の茅舎芭蕉葉面にあらはるゝ

 芋の葉の干(ひ)たる撫で撫づ天馬いづこ

 紅白の供飯の睡蓮茅舎ねむれ