来月(10月)の新刊に鶴見俊輔著『北米体験再考』が復刊するようだ。岩波新書である。
目次
序章 ケンブリッジ
第一章 マシースン
第二章 スナイダー
第三章 フェザーストーンとクリーヴァー
終章 岩国
あとがき
人名索引・地名索引
「終章 岩国」から一部引用すると、
《はじめに書いたように、一九四二年の三月に私が北米でFBIにつかまったのはまったく事故によるものだった。私は反戦運動や学生運動をふくめて、何の活動をしていたわけでもなく、ただ自分の思想として、戦争に反対だった。その思想を移民局で言ったためにつかまえられたので、思想をさばかれたのだ。林達夫は「反語的精神」(一九四六)の中で、「戦争反対」と道で叫んでそれだけでつかまってしまう政治的に無意味な男のことを一種の架空のモデルとしてひいて、より効果的な反戦運動が何であるかについて考えをすすめているが、その古典的なモデルにぴったりあうのが私の例だ。日本に送りかえされてからは、私はこの古典的なモデルほどの表現さえくりかえすことなく、ただ自分の日記に他人の判読しにくい文字を書くことと、人を殺すよりは自殺しようという用意をしていることだけで終ってしまった。私の反戦思想は、自分にたいしてしか表現されない思想の領域まで退いたことになる。》 182ページ
《(前略)北米体験が自分に教えてくれたことは、一口に言えば、かりものの観念による絶対化を排するということにつきる。》 185ページ
- 作者: 鶴見俊輔
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1971/08/20
- メディア: 新書
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