名月や十三円の家に住む


 街路樹のノグルミ(野胡桃)が果実を付けている。枝に手が届くので触ってみた。
 花穂は棘(とげ)の形をしていた。まるでハリネズミのようだ。触ると棘が非常に堅い。樹高は高くて十五メートルくらいありそうだ。

 クルミ科の落葉高木。日当たりのよい山地に生え、高さ約一〇メートル。葉は長楕円形で羽状複葉。六、七月ごろ、黄色の花穂が集まって直立してつく。実は染料に用いる。のぶのき。  『大辞泉


 夕方、月が雲間に見え隠れしていた。

 「名月や十三円の家に住む
 「月東(つきひがし)君は今頃寝てゐるか

 夏目漱石の明治二十九年(1896年)の俳句である。
 九月二十五日の正岡子規への手紙に記された句という。
 当時、漱石が住んでいた家の家賃が十三円。


 「新刊展望」10月号から気になる新刊の覚え書き。

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