『文學界』2月号から

 『文學界』2月号に、「追悼・野坂昭如」と「追悼・原節子」が掲載されている。
 「追悼・野坂昭如」は、「食べてさえいれば」(山田詠美)であった。
 「追悼・原節子」は、「まだ十五歳でしかない彼女の伏し目がちなクローズアップの途方もない美しさについて ──山中貞雄監督『河内山宗俊』」(蓮實重彦)である。
 山中貞雄監督の映画『河内山宗俊』に出演した十五歳の原節子をめぐる映画の話を興味深く読む。
 ジョン・フォードの西部劇映画から学んだ山中貞雄の演出の妙を語りその傑出した達成を論じている。

 一部引用すると、

 《(前略)ところが、そうした視覚的な要素を画面から一掃する山中貞雄は、平易なキャメラアングルによって、平易な物語を語る道を選ぶ。これこそ、アメリカ映画から彼が学んだものにほかならない。(中略)
 いつしか降りはじめていた雪の中で、原節子の無表情に脅える子供。それに続くショットでの原節子の伏し目がちの横顔のクローズアップ。それを目にして心が震えるのは、そこに最良のアメリカ映画が露呈されていたからかもしれない。だが、そのことの意味が、当時も今日も、充分に理解されているとはいいかねる。》  197ページ
 参照:http://www.bunshun.co.jp/mag/bungakukai/index.htm