後藤明生の『この人を見よ』から

ヤエザクラ(八重桜)が満開です。うっすらと紅色の花びらが青空に映えている。

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後藤明生の小説『この人を見よ』を読んでいます。

海燕」一九九〇年一月号から一九九三年四月号に連載された未完の長篇小説「この人を見よ」を単行本化した本です。

本文タイトルの裏に、

――単身赴任者はこう語った

という言葉が記されている。

冒頭、大阪に単身赴任している主人公「私」が大阪から新幹線で東京へ戻って来る場面から小説がはじまる。

私は新宿でカルチャーセンターの文学教室へ通っている。

谷崎潤一郎「転居年譜」なるものを、大正十二年から昭和二十一年までの年譜を作っているのだが、このあたりから小説はにわかに面白くなる。

文学談義が脱線につぐ脱線で滑稽なのだった。笑った。

後半、太宰治志賀直哉との文学的な確執をめぐる登場人物の対話が興味深いものだった。芥川龍之介についての言及もあり、面白い。

 

この人を見よ

この人を見よ