映画『ファントマ』

《映像とは動いていなければ、それでいて色と音に彩られ、起伏を生み出すものでなければならない。》レオン・ゴーモン(創業者)

 「ゴーモン 珠玉のフランス映画史」から、ルイ・フイヤード監督の映画『ファントマ』を観る。連続活劇と呼ばれてサイレント映画の時代に欧米で盛んに製作された。

 第一話から第五話までのうち、第三話までを鑑賞。

 神出鬼没の怪盗ファントマを主人公とした連続活劇。ピエール・スーヴェストルとマルセル・アランの新聞連載小説をフイヤードが映画化。ギヨーム・アポリネールジャン・コクトーコレットら、当時のフランスの作家や芸術家たちを熱狂させた。

 第一話「ファントマ/ベルタム事件(1913年、フランス、59分、白黒、無声、Blu-ray、日本語字幕)

 第二話「ファントマ対ジューヴ警部」(1913年、フランス、64分、白黒、無声、Blu-ray、日本語字幕)

 第三話「ファントマの逆襲」(1913年、フランス、98分、白黒、無声、Blu-ray、日本語字幕)

 

 「ファントマ」は、1913年に上映がスタートして1914年まで続いた怪盗ファントマを主人公にした連続活劇。

 警部ジューヴが犯罪を犯すファントマを追跡する連続もののドラマ。

 ワクワクしてとても面白かった。当時のパリの街並み、自動車、警察の服装などの映像が興味深い。ジューヴ警部の探偵の凄腕とファントマとの知恵比べも見どころだ。

 11月パンフレットに「連続活劇とルイ・フイヤード」と題するシネマコラムによると、《冒険活劇や探偵が活躍する犯罪映画など、スリルとサスペンスにあふれたストーリーを数話に分け、観客の期待をそそりながら数週間、数カ月にわたって上映する作品を連続活劇と呼び、サイレント映画の時代に欧米で盛んに製作された。》という。

 第四話「ファントマファントマ」(1914年)

 第五話「ファントマの偽判事」(1914年)

 

映画『私たちは一緒に年をとることはない』

 「ゴーモン 珠玉のフランス映画史」からの一本。

 モーリス・ピアラ監督の映画『私たちは一緒に年をとることはない』(1972年、フランス、イタリア、107分、カラー、Blu-ray、日本語字幕)を鑑賞。

 出演、ジャン・ヤンヌ、マルレール・ジョベール。

 映画監督のジャンは、6年前からカトリーヌと付き合っているが、妻のフランソワーズと生活を共にしている・・・。ピアラの自伝的な作品であり、ジャン・ユスターシュの『ママと娼婦』と並び、映画史に残るカップルについての傑作。

 映画作家のジャンは、フランソワーズという妻がいるのだが、若いカトリーヌとも付き合っている。物語はジャンとカトリーヌの愛憎劇を中心に展開される。

 カトリーヌを部屋から追い出したかと思うと、実家に帰っていたカトリーヌの家へ現れたりとか、二人が反発をしたり、延々と繰り返される。共に依存的な関係に陥って抜き差しならない。しかし、ラストまで退屈せずに見れた。

 ジャン・ユスターシュの『ママと娼婦』と並び、映画史に残るカップルについての傑作という解説文があるのだが、映画『私たちは一緒に年をとることはない』の方が、映画としては先に公開されている。

 

干柿の蠅またふえぬ上天気

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 朝晩が冷え込む。最低気温8℃。快晴で日差しが強い。最高気温21℃。乾燥した風が吹く。秋日和である。

 シャリンバイ(車輪梅)の実を見つける。枝の先に密集して白い花が咲いていた。

バラ科の常緑低木。本州南西部・九州の海岸に自生。葉は長楕円形で、枝の上部にほぼ輪状に密生する。五月ごろ、枝先に梅に似た白花が群がって咲く。実は黒紫色。樹皮から大島紬(おおしまつむぎ)の染料をとる。たちしゃりんばい。  『大辞泉

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 「干柿の蠅またふえぬ上天気

 「柿干して日当りのよき家ばかり

 「石に腰下せば一葉かたはらに

 松本たかしの俳句である。昭和十年(1935年)の『松本たかし句集』から引用。

みうらじゅんのファンブック~松本清張~

 今年生誕110周年を迎えた小説家・松本清張をめぐる「みうらじゅんのファンブック~松本清張~」というNHKラジオの番組を聴きました。

 清張の小説と映画化した作品をめぐる興味深い文学・映画の談話、映画音楽も流される。松本清張へのインタヴュー、講演の音声も聞けて身近に感じられた番組でした。

 

ジャック・ベッケル監督の映画『怪盗ルパン』

「ゴーモン 珠玉のフランス映画史 世界最古の映画制作会社の軌跡」

《先月に引き続き、映画史を塗り替えてきたゴーモンの歴史を辿るべく、時代を超える傑作を上映します。神出鬼没の怪盗ファントマを躍動感溢れる映像で描き出したルイ・フイヤードオーソン・ウェルズとならぶ話術とフェイクの天才サッシャ・ギトリジャック・ベッケルジャン・グレミヨンマックス・オフュルスロベール・ブレッソンモーリス・ピアラ、そしてジョセフ・ロージー・・・。日本では上映機会の少ない、時代もジャンルも異なる巨匠たちの傑作セレクションをお届けします。 》

 ジャック・ベッケル監督の映画『怪盗ルパン』(1957年、フランス、104分、カラー、Blu-ray、日本語字幕)を鑑賞。

1910年、パリ。怪盗アルセーヌ・ルパンは、得意の変装を武器に次々とお宝を手に入れる。ルパンを見初めた美しい貴婦人ミナ・フォン・クラフトは、自分が仕えるドイツ皇帝カイゼル2世のもとに彼を呼び寄せ、ある依頼をするが・・・。(上映パンフレットより)

 首相夫妻の田舎の別荘で開かれている夜会は優雅にワルツを踊っている。ルパンは車で乗り付けて変装して紛れ込む。そして、首相自慢の絵画を盗むのだが、待たせている運転手二人と連携して見事に盗み、ルパン参上、といった紙切れを額縁の後ろに置き一目散に逃げ去る。パリでは宝石店から宝石をホテルでトリックを使い盗む。別荘の夜会で知り合った貴婦人ミナ・フォン・クラフトを通じてドイツ皇帝カイゼル2世の国へパリから車で拉致されルパンは行く。カイゼル2世から秘密物を部屋に隠しているのだが、その場所を見つけろという命令を受ける。ルパンは隠した場所を見つけたが宝石は盗まず、別の金庫の100万マルクを持って馬で逃げ去る。それを馬で追ったミナはふもとを走っているルパンの姿を確認してにやりと笑顔に包まれるのだった。

 パリの大富豪ラロッシュがルパンの正体なのだが、身元がばれそうになっても機転を働かせて切り抜けていく。夜会服の衣装が豪華、室内装飾の美術も見事、残忍な場面もなく、洒落たセリフとユーモアがある。洒落っ気のあるコメディタッチの映画で素晴らしい。

共同フェアの小冊子から

 書店で、亜紀書房朝日出版社の共同フェアが現在開催中だった。平台に本が並べられていました。ブックリストの小冊子が置いてあったので、手に取ってみました。興味を引く本が目につきます。

 「大人にこそ読んでほしいメルヘンの世界」からは、コマツシンヤの『午后のあくび』でしょうか。「見方や裏側がわかれば、作品がもっとたのしめる」からは、南伸坊の『私のイラストレーション史』になりますか。

 

午后のあくび

午后のあくび

 

 

 

私のイラストレーション史

私のイラストレーション史

 

 

 

サッシャ・ギトリ監督の映画『とらんぷ譚』

 「ゴーモン 珠玉のフランス映画史 世界最古の映画制作会社の軌跡」

 《1895年の創業から現在まで、120年以上に渡る歴史を誇る世界最古の映画制作会社「Gaumont(ゴーモン)」。1911年には、6000もの観客席を擁した映画館「ゴーモン・パラス」をパリにオープンさせ、映画館の経営にも乗り出しました。名だたる映画監督たちの作品を手掛け、映画史を塗り替えてきたゴーモンの歴史を辿るべく、時代を超える傑作を上映します。日本では上映機会の少ない、時代もジャンルも異なる巨匠たちの傑作セレクションをお届けします。》

 サッシャ・ギトリ監督の映画『とらんぷ譚』(1936年、フランス、81分、白黒)を鑑賞。

ギトリが自身の小説「詐欺師の物語」を脚色・監督・主演したトーキー二作目。盗みがバレて、一夜にして孤児となった少年がモナコのカジノでプロの詐欺師となり、カフェで回想録を執筆する・・・。
「ギトリはエルンスト・ルビッチの“フランス人の兄”だ」――フランソワ・トリュフォー  (上映パンフレットより)

  出演、マルグリット・モレノ、ジャクリーヌ・ドリュバック、ピエール・アシ。

 家族が毒キノコを食べて11人が死んだ中で一人生き残った少年がケチな養父に引き取られ、そこを逃げ出した。レストラン、ホテルと転々としてカジノのプロの詐欺師になった男の半生記。

 活動弁士、落語家のような語り口で物語が展開する。小道具、フィルムの反復、再生、恐怖心、笑いと飽きさせない。今見ても古びていない。